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「誰よりも速く、前へ」2016パラカヌー海外派遣選手最終選考会 兼 第26回府中湖カヌーレガッタ

2016.03.30

2016年3月22日~28日に、香川県にある府中湖で、「2016パラカヌー海外派遣選手最終選考会兼 第26回府中湖カヌーレガッタ」が開催された。
パラリンピックで行われるカヌー競技は200mのスプリントで、種目はカヤック部門とヴァー部門の2つに分かれる。カヤック部門はパドルを左右交互に漕いで前に進んでいく。ヴァー部門は、「アウトリガー」と呼ばれる「浮き」がカヌーの横についており、浮きの反対側を漕いで前進する。
会場に行くと、選手とスタッフが艇の準備を行っていた。
一般的にカヌーでは艇の幅が狭い方が水の抵抗がなくスピードが出やすいのだが、パラローイングでは幅が広く比較的安定性のある艇を使用している選手がほとんどだった。幅の狭い艇はバランスを取るのが難しく、下肢に障がいのあるパラカヌーの選手たちはよりバランスが取りづらい。しかし、ただでさえ不安定な艇を、下半身が使えない状態で乗りこなしていることを考えると、選手たちのバランス能力は高いといえる。

艇にはそれぞれの体型に合わせたシートが取り付けられている。上体のバランスを保つことができるよう、シートと体とを止める固定具を取りつけた艇もある。足元も選手の足がぐらつかないよう、それぞれの足形に合わせた設計がされている。
パラかカヌーのクラスは、胴体が動かず肩の機能だけでこぐ選手、胴体と腕を使ってこぐ選手、足・胴体・腕の全てを使うことができ、力を入れて踏ん張って操作できる選手の3つに分かれる。

艇に乗り込む際は湖面に設置されている乗り場に移動する。ここではサポートが艇を運び、必要に応じて乗り込みも補助する。少し幅の広い艇といっても安定性がそこまで良いわけではない。慎重に乗り込みをしないと転覆をしてしまう。
府中湖の湖面は風があり、選手たちがスタート位置につくまでに時間を要した。風や波にあおられスタート位置につくまでにバランスを保つことができず転覆をしてしまうこともある。
大会では200mのスプリントを、時間を分けて2本行った。
今大会は、今年5月にドイツで開催される世界選手権に出場する選手の選考会になっている。大会への参加者は男女合わせて8名。男子4名、女子4名のカヤック種目が行われた後、男子1名でヴァー種目が行われた。
直線200mの勝負に要す時間は50秒~2分弱。あっという間のようにも感じるが見ごたえは十分。ぐんぐんとゴールに向かって進む艇と選手の力強い漕ぎに、見ている側も力が入る。

アウトドアスポーツとして楽しまれてきたパラカヌーは、パラリンピックでの実施が決まったことで「競技」という新たな選択肢が生まれた。水や自然と一体となる楽しさはどちらにも感じることができる。
パラカヌーの楽しみ方は今後更に広がっていく。
■2016世界パラカヌー選手権大会 兼 リオデジャネイロパラリンピック予選派遣選手
瀬立 モニカ 選手(江東区カヌー協会)
中嶋 明子 選手(マルホ株式会社)
諏訪 正晃 選手(江東区カヌー協会)

日本障害者カヌー協会
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