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「世界に挑む!」 パワーハウス取材記

2016.07.12

2016年7月8日(金)、東京都調布市にあるパワーハウスの取材を行った。
このパワーハウスとは、特定非営利活動法人日本パラ・パワーリフティングの代表でもある吉田進さんと寿子さんが夫婦で運営しているジムである。FC東京の本拠地としても有名な味の素スタジアムのそばにあり、最寄りの飛田給駅からも徒歩3分と非常に好立地にそのジムはある。
パワーハウスでは、健常者と一緒に、現在7名のパラ・パワーリフティングの選手が練習をしている。実際にパワーハウスは、車椅子の選手でも利用しやすいように段差がないなどのバリアフリー環境が整っており、トイレも大き目に作られている。
吉田さんは、最初は府中にジムを設けていたが、パラ・パワーリフティングの魅力にみせられて障がい者でも利用できるジムを作りたいと思い作ったのが、このパワーハウスである。実際に障がいを持ったアスリートが練習できるジムはそんなに多くはない。訪問時には、コーチやアスリートの方々が7名おり、時に談笑しながら、真剣に練習に取り組んでいた。
まず最初にお伝えしたいことがある。それは、パラ・パワーリフティングは、障がい者が健常者よりも良い成績を残しているチャレンジド・スポーツの中でも珍しい競技のひとつであるということだ。事実、世界のトップクラスの選手は、健常者よりもよい成績を残している。まだ日本のパラ・パワーリフティングでは健常者に勝る成績は納められていないが、日本人チャレンジド・アスリートが健常者の記録を超す日もそう遠くはないであろう。

 実は、2016年6月26日(日)に北九州市の小倉北体育館にて「2016年パラ・パワーリフティング ジャパンカップ」が実施された。
詳細は、チャレアスのバックナンバー「次世代の活躍 2016年パラ・パワーリフティング ジャパンカップ」(CHALLEATH)にてご覧いただきたいが、同大会には、リオデジャネイロパラリンピック日本代表推薦選手の西崎哲男選手、大堂秀樹選手が出場することで、大きな注目を集めた。また、パワーハウスで普段練習をしている選手も出場し、その中でも佐野義貴選手は、自身の持つ144キロを3キロ上回る147キロを記録し、見事日本新記録を打ち立てた。
ジャパンカップを終えての感想と今後の意気込みを吉田さんに聞いてみた。

記者  :今回のジャパンカップを終えての総括と気になった選手がいたら、
     教えてください。
吉田さん:気になった選手は全員です(笑)
     その中でも今回の大会は大堂選手や佐野選手などトップクラスの力が戻ってき
     たことを実感できた大会でした。また初めて参加する選手も8名おり、少し
     ずつではあるがすそ野が広がってきたように感じられます。
     具体的な名前を出すと、假屋隆広選手は車椅子アームレスリングの日本チャン
     ピオンですが、4か月前にパラ・パワーリフティングの競技を始めました。パラ・
     パワーリフティングは40代からでも競技力が向上する競技であるため、他の障
     がい者スポーツに取り組んでいたアスリートが転向しやすい競技でもあります。
     事実、最近はアイススレッジホッケーやパラサイクリングからも転向してきた
     選手が活躍をしています。
記者  :日本のパラ・パワーリフティングについて、世界との差があるかと思いますが、
     その世界との差をどのように今後埋めていこうと考えていらっしゃいますか?
吉田さん:確かに世界との差はあります。
     それはパワーリフティングに限った話ではなく、どのスポーツにも当てはまる
     と思いますが、生まれつきの体形や骨格などフィジカルについて差があるのは
     事実です。
     ただそのフィジカルの差を埋めきれないかと言われれば、決してそんなことは
     ありません。
記者  :確かにサッカーでもフィジカルの差を埋めるために、アジリティ(俊敏さ)や連
     携では世界でも勝負できるとよく聞きます。
吉田さん:その通りです。パワーリフティングと聞けば、筋力や体力などのフィジカルが真
     っ先に頭に浮かぶかもしれないですが、それらを鍛えるのと同様に、フォームを
     いかに整えるかが重要です。バーベルをいかに短い距離で押し上げることがで
     きるか。それが勝負を決める場合も多いです。
     フォームについては、正しい練習を積み上げることで必ず身に付けることがで
     きます。その点で日本人選手は世界に近づくことができると考えています。
記者  :なるほど。つまりフィジカルだけではなく、正しい練習を積み重ねることで、好
     成績を狙えるということですね。
吉田さん:まさにその通りです。
     先ほどもお伝えした通り、パラ・パワーリフティングは、40代からも結果が伸
     びる競技です。そういう意味では、この競技を始めるのに遅いなんてことはない
     です。もしかしたら今まだパラ・パワーリフティングに出会っていない人でも、
     2020年の東京パラリンピックでメダリストが出るかもしれないですね。
記者  :これからパラ・パワーリフティングをはじめる方に、競技の魅力を教えてください。
吉田さん:競技の魅力はいくつもありますが、まずは3ヶ月で自分の上半身が如実に変化
     するのを実感でき、結果が目に見えやすい点です。
     練習をすればするほど、数字と体に明確に返ってくるので、その点は非常に
     やりがいがあります。
     また、パラ・パワーリフティングは健常者と同じ条件で競技することができ、健常者よりも強く
     なれるかもしれない点が一番の魅力です。
     ちなみに、この競技をやると集中力も高まります。
     パラ・パワーリフティングの選手達は、大会で自身の競技の瞬間にトップコンデ
     ィションを持ってくるように調整をします。
     競技の瞬間は、数秒程度。その数秒に合わせて、トップアスリート達は2ヶ月も
     前から調整を開始するのです。まさに一瞬に賭ける!です。

記者  :最後にパラ・パワーリフティングの今後の目標を教えてください。
吉田さん:4年後の東京パラリンピックに可能な限り多くの選手を出場させ、
     金メダリストを出すことが目標です。
     東京パラリンピックに出場するためには、来年行われる世界大会で銅メダル以上を取る
     ことが重要になります。
     先ほども申し上げた通り、この競技は、スタートする年齢に制限はありません。
     その意味では、現在パラ・パワーリフティングをまだはじめていない人がメダリストに
     なる可能性も大いにあります。
     少しでもご興味を持たれた方は、パワーハウスまでご連絡ください。
当日は、チャレアス公式マネージャー稲森寿世が、佐野選手へのインタビューも行いました。
佐野選手へのインタビューは、別途動画で掲載させていただきますので、併せてご覧ください。

パワーハウス
特定非営利活動法人日本パラ・パワーリフティング連盟
CHALLEATH(チャレンジド・スポーツポータルサイト)