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広がる期待と高まるエネルギー「第2回中部日本パラ・パワーリフティング記録会」

2022.09.17

男子59kg級 光瀬智洋選手

2022年9月10日~11日、愛知学院大学日新キャンパスで「第2回中部日本パラ・パワーリフティング記録会」が開催された。この記録会にはパラリンピック出場選手から初参加の選手まで、男女合わせて30名が参加した。

男子59kg級出場した光瀬智洋選手は同階級の日本記録保持者で、今年4月に開催された「チャレンジカップ京都」で150kg、6月のアジア・オセアニア選手権(韓国)では153kgと、自己の持つ日本記録をコンスタントに更新している。この日は第1試技で150kgを成功させると、第2試技、第3試技は156kgに挑戦。共に惜しくも失敗となったが、成功の可能性が十分に感じられる試技であった。光瀬選手は、「調子は良かったけど夏バテ気味でした。季節の変わり目で体調のコントロールが難しかった。1回目で150kgを決められて良かったです。」とこの日の試技を振り返った。
今後の目標として「12月にドバイ(UAE)で開催されるワールドカップでは159kgを挙げて、パラランキングを上げるのが目標です。来年6月の世界選手権(UAE)では170kg成功が目標で年間20kg(アップ)。今のところプランはこなせていっています。」と、コメントからトレーニングが順調に進んでいることが窺える。記録を更新し続ける光瀬選手に、今後も注目したい。

パラ・パワーリフティング初参戦の女子45kg級安川祐里香選手

パラ・パワーリフティングは、パラ陸上や車いすテニスなど、他の競技と並行して取り組んでいる選手が複数いる。
今回、パラ・パワーリフティングに初挑戦した女子45kg級の安川祐里香選手は、パラ陸上のマラソン、トラックの両方で活躍している。
安川選手「シーズンオフにトレーニングの一環としてベンチプレスを始めて、結構重量を挙げられるようになりました。パラ・パワーリフティングの選手から、大会に出てみてはどうかとお声がけいただき、モチベーション一つとして記録会に出てみようと思いました。」と参加のきっかけを語った。また、競技の並行について安川選手は「ウェイトトレーニングをするようになって、陸上の強化にもなっていますし、パワーがついてきました。陸上のタイムも良くなって相乗効果は出てきています。」とプラスの効果を実感している。

安川選手「今回は初参加で何もわからない状態だったので、ルール把握とどれだけできるかを試しました。普段練習をしている重量にプラスして第3試技を挙げてみましたが、安定せず挙がりませんでした。それでも第1試技、第2試技は意識してできました。」と、納得の表情で記録会を振り返った。

      女子50kg級 柳原愛選手

パラ・パワーリフティングには、スポーツ庁等が取り組んでいる選手発掘事業「J-STARプロジェクト」の修了生が多く活躍している。修了生として力を伸ばしている女子50kg級の柳原愛選手と、男子107kg級の渡邉和幸選手に、インタビューを行った。

柳原選手はJ-STARプロジェクト5期生で、パラ・パワーリフティングの経歴は約1年。この日柳原選手は女子50kg級に出場し、自己新記録となる48kgを成功させた。初めて出場した昨年の同記録会からプラス15kgと、大幅に記録を伸ばしている。
柳原選手「リハビリの一環として体を鍛え始めてベンチプレスをやって楽しかった。いろんなスポーツを体験してどれも楽しかったけど、一番楽しかったのがパワーリフティングでした。日々の練習は自分との戦いで落ち込むこともあるけど、目標に向かって練習し、重量を挙げられたときが嬉しいです。」
柳原選手は、国内の全日本標準記録を突破し、公式戦に出場することを目指している。

渡邉和幸選手はJ-STARプロジェクト3期生。練習環境を整える為に、今年、自宅に車いすで練習ができるトレーニングルームを作った。渡邉選手は、この日第3試技で自己記録を上回る138kgに挑戦。最後まで力強くバーを押し上げ、見事に試技を成功させた。
試技全体を振り返り、渡邉選手は「今日の目標は140kgでした。2回目の135kgで失敗してしまったので、138kgになりました。」と悔しさをにじませた。今後の目標として「全日本標準記録が107kg級は153kgなので、当面の目標は153kgを挙げることです。中長距離の目標として、2026年に愛知県・名古屋市でアジアパラ競技大会の開催が決定しているので、そこに出場したいと思っています。」と気持ちは次へと向かっている。

自己ベストを更新して笑顔を見せる渡邉和幸選手(男子107kg級)

パラ・パワーリフティングは、幅広い年齢層の選手が活躍できるメリットにより他競技から選手が流入し、J-STARプロジェクトを活用していることで選手の発掘も進んでいる。以前は全階級を合わせても少数しかいなかった女子選手が、最近の大会では階級ごとに順位争いをする程増加している。今回、パラ・パワーリフティングの会場では、たくさんの可能性を発見することができた。

光瀬選手
「まだまだ人数が少なかったりしますが、若手がもっと強くなって新しい形になったらもっともっと日本は強くなると思います。海外の選手と互角に戦える選手はこの先出てくると思います。自分自身もそうなると思っています。」
国際大会を経験し、成長著しい光瀬選手の言葉から、パラ・パワーリフティング全体のエネルギーが高まっていると感じた。

国内では、2023年1月29日(日)に、東京都の築地本願寺第二伝道会館で、「第23回全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会」が開催される予定となっている。この大会は、全日本標準記録を突破した選手のみが出場できるため、国内の有力選手が多数出場をすることが予想される。


大会公式HP(日本パラ・パワーリフティング連盟)

女子67kg級龍川崇子は非公式ながら77kgを挙げ日本最高記録を更新